2013年11月29日〜12月1日 熊野古道(中辺路)
くまのこどう(なかへち)
今回は知り合いのスイス人の山男と、その奥様の来日(何と7週間の休暇!)に合わせて熊野古道ロングウォークを企画した。世界文化遺産である熊野古道にはいくつかのルートがあり、中でも中辺路(なかへち)と呼ばれる道は平安時代に後白河上皇が33回、後鳥羽上皇が29回も通ったといわれ、最もポピュラーな熊野参詣道である。それは、途中にたくさんある「王子」を辿り熊野三山(熊野本宮大社•熊野速玉大社•熊野那智大社)を目指す山道だ。
王子とは…
熊野九十九王子は、京都から熊野三山に至るまでの途次、難行苦行の信仰の道をつなぐために設けられた神社である。熊野権現の御子神を祀る分社であり……旅の安全を祈願する場であった(田辺市パンフレットより)。
【11月28日】
夜九時、スイスからのお客様が高槻駅に到着、同時に埼玉からの参加者も集結し筆者宅にて結団式を執り行った。ミーティングでは翌日からの行動計画を確認し、装備の点検をして就寝。
【11月29日】
618最寄り停留所から始発バスに乗り高槻駅へ。新大阪駅には655着。昼食用のお弁当を購入し733発の特急くろしお1号に乗車。通勤電車を横目に窓外を見ると、大阪市内は雨で濡れており雲行きも怪しく天気が危ぶまれる。今回メンバーには雨男と晴れ女が混在しているため、天候がどうなるか見ものだ。乗車率は半分程度で、ほとんどがビジネス客。和歌山を過ぎると車内販売が始まるとの車内放送があり、コーヒーを購入しお菓子など食べる。紀伊田辺駅には958着。1015発の小型バスに乗り換え1058滝尻に着いた。
滝尻には滝尻王子があり、熊野古道中辺路ルートの起点となっている。そして熊野古道館や無料休憩所が整備されている。まずは滝尻王子を参拝する。付近のモミジが紅葉で美しい。早めの昼食を摂るために休憩所に入る。テーブルと椅子だけが置かれた小屋だが清潔で便利である。お湯を沸かしてインスタントスープを作り駅弁を食べる。その後、熊野古道館に立ち寄り係員にルートの様子を確認。古道館は熊野古道の歴史の解説パネルが展示されている他、平安衣装の着付けサービスなどもある。またモンベル製品も販売しており、手袋や帽子、スパッツなどの小物装備が調達できる。
滝尻から1202バスで栗栖川まで移動、古道を少しショートカットする。川を渡り舗装道路をどんどん上る。30分歩き高原(たかはら)という集落で熊野古道に入った。ルートは集落を通過するが、急傾斜の上り坂が続き息が切れそうだ。登り切ったところに8番の番号が書かれた標識がある。この番号標識はルート上に500m毎に設置されているもので、1番の滝尻王子から75番の熊野本宮まで続く。つまりこの間の距離は約38Kmである。
9番を過ぎると山道となり古道らしい雰囲気である。相変わらず上り坂がじわじわ続くが、舗装路とは異なり気持ち良い。1330大門王子に到着。王子には風化しかけた小さな石像があるだけで拍子抜けの感も否めないが、一応見物。ここで一人の外人が我々を追い越して行った。
古道は山の斜面に付けられているが、峠を越して行くのでなだらかなアップダウンが続く。1400十丈王子着。先に休んでいた若い女性が出発するのを見やり、我々も休憩する。きれいなトイレあり。風が強く立ち止まると寒い。その後、先ほどの女性を追い越しざま声を掛けると、滝尻から近露までの行程だという。我が方の今日の目的地と同じである(結局、この女性と最初に追い越された外人も同じ宿であった)。
17番あたりで本日の最高地点688mを通過し黙々•淡々と下って行くと道路に出合い、道の駅に辿り着いた。小休憩してから古道に戻り牛馬童子像へ。ここから急な石畳を下ると近露集落に着いた。近露王子を参拝し400m歩いて「民宿ちかつゆ」到着。この宿には「ひすいの湯」という温泉施設が併設されており、ここで入浴する。弱アルカリ性の湯で気持ち良さ最高だ。夕食はこの温泉の湯を使ったという豚鍋、混ぜご飯、トンカツ(筆者のみ特別料理)でなかなかのご馳走。もちろんビールは欠かさず。再度風呂に入り速攻就寝した…Zzz
【11月30日】
朝食時間を610に早めてもらい650出発、埼玉へ帰るメンバーは706発のバスで紀伊田辺駅へ。残った我々は722バスを待つ。気温は低いが風はなく快晴の天気である。小広峠で降車し(近露〜小広峠間は7Kmの舗装道路歩きなのでバスで短絡した)熊野古道へ向かう。10分程でルートに合流、すぐに沢を渡り登り返す道となる。どんどん高度を上げて尾根まで登り着き、平坦となったところで小休止、息を整える。その後は一気に谷へ降りる。下りきると、熊野古道は通行止めとなっている(これは予め分かっていた)。2011年の台風12号で山の大崩落があったため、とのことである。迂回ルートが作られており、そちらに向かう。沢を渡り再び尾根を目指しての登りだ。迂回路のためか強引なルートで、つまり連続階段でぐんぐん高度を上げる。逆にこちらのエネルギーは急降下。尾根を乗り越え林道まで下る。未舗装の道を少し行き蛇形地蔵に到着すると、本来のルートに戻って迂回路は終了。蛇形地蔵は薄暗い林の中にあり、古いトイレがある。休憩を取ろうと思ったが場所が良くないので先を急ぐ。湯川王子を過ぎると三度目の登りで標高548mの三越峠に着く。新築の立派な休憩所(トイレ付き)にて、宿で作ってもらったおにぎり、チョコレートなど補給する。
峠を越えて長い坂を下って行く。54番〜59番を見送り船玉神社、猪鼻王子を過ぎる。この辺りの紅葉は真っ盛りで見事だ。中辺路キーポイントの発心門王子へ登り着くと、そこは舗装道路の脇で路線バスが駐車している。日の当たらないベンチで昼食タイムとする。湯を沸かし味噌汁で一息ついて舗装路を下り、道標に従って右折すると、立派なトイレ付き休憩所があった(知っていたらここで昼食休憩をしたのに、と悔しい)。
その後はのどかな山間の集落を通って行く。付近の民家がいくつも無人販売所を出しており、梅干しやらドクダミ茶などが並んでいる。水呑王子、伏拝王子を通過すると、いったん上り坂となるがその後はいよいよ熊野本宮大社への下りとなる。舗装路に降り立ち、75番を過ぎるとすぐに本宮大社だ(1440着)。八咫烏(やたがらす)の幟が迎える本殿には四つの社が並んでおり、順番に参拝する。1505バスに乗車すべく、階段を駈け降りバス停へ。川湯温泉へはバスで10分ほどの距離である。1530まつやホテルにチェックイン。このホテルはコンドミニアムのような施設で、大風呂や食事は系列の別ホテル(徒歩2分)まで行かねばならない点が面倒だが、低価格なのがメリットではある(小浴場はあり)。
系列の別ホテル大浴場に行ってみる。浴場から外に出るドアを開けると河原に続く階段があり、川面とほぼ同じ高さの露天風呂に入ることができる。まことに気持ち良い。
実は、川湯温泉の有名な「仙人風呂」を楽しみにしていたのだが、例年12月オープンのところ今年は川の増水の影響で12/5に延期となり入浴は叶わなかった(持参した水着が役にたたなかった)。しかし、ホテルの露天風呂でも十分満足できたのであった…(強がりではない)。
【12月1日】
7時朝食、バイキング形式だったのでパンとハム•サラダを余分に取り昼食用のサンドイッチを作成し持ち出す(よくやる手である)。川湯温泉858発のバスに乗るべくバス停で待っていると仙人風呂方面に向う人が通る。聞いてみると風呂はまだ温度が低く、足湯を楽しむ程度とのこと。定刻より若干遅れて到着した新宮行きバスに乗る。バスは熊野川の流れに沿って国道168号線をクネクネ走る。約一時間かけて権現前BSに到着。ここは熊野速玉神社まで5分の場所である。次に乗る1034発のバス停を確認し神社へ向かう。
参詣を済ますと直ぐに回れ右、BSに戻り勝浦行きのバスを待つ。那智駅にて那智山行きバスに乗り換え大門坂駐車場にて下車。ここから、今回ツアー最後のウォーキング行程が始まる。大門坂とは熊野那智大社への表参道で、長いと石段を登る道である。
自然石を組み並べた参道は杉の巨樹並木の中を上って行く。まさに古道の雰囲気満点だ。30分程の上りで熊野那智大社に登り着き、熊野三山詣でを完全制覇。お札を購入し、隣にある青岸渡寺の前を通って那智大滝へ向うが、神社と寺院が敷地を並べて隣接している様は奇妙である。那智大滝を見物後バスを待つ間に、メハリ寿司ならぬ「メハリおにぎり」を購入(一個180円)。予定より早いバスで那智駅に戻る。駅は海岸沿いにあり、浜には立派なベンチとテーブルが設置してあったので、ここで昼食。天気良く日射しが温かく、風もない最高の日和である。
那智駅を1417発の普通電車で串本に出て、特急くろしお号で大阪に戻った(何と3時間半もかかった)。
電車•バス•歩行をパズルのように組み合わせる、やや複雑な二泊三日の行程だったが無事に終えることができてほっとした。連日天気に恵まれたのも幸いであった(晴れ女のパワーが勝った)。
本コースのおすすめ度=5
世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」における「文化的景観」は是非訪れて歩いてみることをお薦めする。今の時期はシーズンオフで人が少なく、静かな雰囲気の中で自然を堪能することができた。別ルートもあるので、熊野の静寂で深い森をさらに歩いてみたい。
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